ひとときの音楽
Drop & Reborn
素敵な歌を知りました。パーセルの「ひとときの音楽」。パーセルの世界観が心に染み渡ります。
この歌の中に、ギリシャ神話の復讐の三女神の一人、アレクトが出てきます。
アレクトは、不義不貞が復讐の対象になっていて、不和や憎しみ、怒りといった感情が彼女のテーマ。
アレクトの頭髪は蛇でできています。
歌の途中で、「drop,drop,drop…」と繰り返されるところがあるのですが、それは、アレクトの蛇が落ちていく音、なのです。
アレクトの復讐心の象徴である蛇がひとつひとつ落ちていく。全ての蛇が落ち、手に持ったそのムチを手放したとき、彼女に幸せが訪れるであろう。
そんな歌に、一瞬で心打たれてしまいました。
(敢えてのカウンターテナーでどうぞ)
歌詞の訳をネットから拝借。
ひとときの「音楽」はあなたの心の悩みをすべて癒すだろう
「音楽」は自分があなたの痛みを和らげたことを不思議に思い、
人々に喜ばれることをいぶかしく思い続けるのだ
復讐の女神アレクトが、
死者の永遠のいましめから自由にするときまで
彼女の頭から蛇が落ちるときまで
手からムチが落ちるときまで
「音楽」はそう思い続ける
音楽はほんのひとときであなたの心の悩みをすべて癒すだろう
世の中はハロウィンですね。
ケルトの暦では11月1日が新年で、その前夜の今日が大晦日。この大晦日に死者たちが戻ってくるとされていて、11月からの厳しい冬を越える為に、死者たちからのパワーを借りて乗り越えて行こう、そういった願いがハロウィンの起源なのだそうです。
「Trick(いたずら) or Treat(もてなし)!」は、死者たちをもてなさないといたずらしちゃうぞ!という意味なんですよね。
このケルトの思想を「闇から光へ」「死から生へ」ということばで芸術文明史家の鶴岡真弓先生は表現されます。今日と明日という日は、闇と光、死と生の狭間の日なのかもしれないです。
私たち日本人の中にもそういった狭間のエッセンスってあると思います。
日本には「あわい」という言葉があります。それは、何かと何かの間のことを指す言葉で、それは、自己と他者かもしれないし、男と女かもしれないし、あの世とこの世かもしれない・・・。
死と生が交わる日の今日と明日。
あわいの日。
このブログのタイトルも、「Rborn」から「Drop & Reborn」に変えました。
心の中にある怒りや悲しみをDropすることは勇気がいります。けれども、その先には必ずReborn(再生)があります。
必ずです。
そして、怒りや悲しみの裏側にある、何もかもが輝いて見えていた頃のことや、ときめきや、喜びという得がたい経験があったことを思い出して、その感情と一緒に蛇の感情も、抱きしめることになるでしょう。
そんな狭間に、再生が宿るのです。
今夜はハロウィンに心を寄せて、ひとときの音楽をシェアしました。